冬のイルクーツク、バイカルツアー(2018.2) その6 文化交流編
さて、オリホン島の国立自然公園にて、シベリアの真珠とはいったい何たるかを知った我々だったが、フジュル村への帰路にてロシアンサウナ、バーニャのオプションをつけるやつけざるやという話になった。
料金は1000ルーブルと追加の車代300ルーブルくらいだったか?
フジュル村のロッジはシャワーしかなかったので、じゃあ疲れを取るためにいっちょやってみっかということで話を聞いていると、なんかバイカル湖にダイブするとか物騒な話が聞こえてくる。
なんでサウナに入ることと、バイカル湖に飛び込むことが同時に話に出るのがよく理解できないで居る私。
いやいや、いくら水中は0度未満にはならんとはいえ、さすがに冗談やろ。
と思っていたが、どうにも本気らしく、道中の車中でまた、「これで景気づけしな!」的な感じでコニャックを渡される。
いや、ロシアンサウナのロシアンって、罰ゲームで負けた奴がバイカル湖に飛び込むみたいな、ロシアンルーレット的な意味合いでもロシアンなの?
と、思っていたが現地について理解した。
いや、馬鹿だろ笑
イッテQかよ!!
てか、そもそもサウナが氷の上に立ってるし、これ毎年解体して組み立ててを繰り返してるのかよ!
相変わらず、すげーDIY能力だ。
氷の中のサウナに入ってみると、薪のストーブがしゅうしゅうと熱を発していた。
これに、水を加えることで、一気に暑い蒸気が室内に充満しスチームサウナ状態になるようだ。
同行のロシア人の奥様から内部の写真撮影はNGが出たので内部の写真がないのが残念だが、サウナ自体はなかなか乙なものだった(最後に出るときにとっておけばよかった。)。
要は、ここのサウナであったまった体を、バイカル湖の水に飛び込んで一気に冷やすということらしい。
理解したけど、理解したけど、マジかよ。
みんな水着なんて用意していないので、下着でサウナに入る。よく説明していなかったが、ロシア人嫁は、年としては31歳の私たちよりも少し年上くらいだろうか?
まあ、なんちゃ普通に美人なんだが、自然と下着になって俺らと一緒にサウナに入る。
なんかそういう文化をテレビあたりで見たことあったが、ほんとうに女性の羞恥心というのが文化次第で異なるのも面白い。
ロシア人は女性が強いという話はたまに聞くところであるが、そういうのも関係しているのかもしれない。
さて、サウナに入ってしばし経つとなるほど、体が結構火照ってくる。
なんか、ちょっと飛び込んでもいいかな?という気持ちにもなってくる。
で、ロシア人の諸兄が、次々とサウナから飛び出してダイブしてくるのを見て、ついに私も決心がついた。
ドアを開けて一気に水中に飛び込む!
飛び込んだ後は、なんかもうよく覚えてない。穴の中は意外と浅く、(1mちょいくらいか)すぐに足がつく。
混沌とした意識の中で、「あ、意外と砂地なんだ」というのが一瞬頭によぎる以外はとにかく「無」である。体が芯から冷える前に、必死であがって、またサウナに戻る。
サウナに戻ると、その暑さがとても心地よく、体の芯に残っている熱と、皮膚の内側にある水の冷たさと、またその外側の熱が折り重なるような感覚を覚える。
なんだろう、むかししもやけになったときに冷たい水とお湯に交互に足を浸して、血行をよくしていたのを思い出した。
一回、やってしまえばなんということはない。確かにこれで長時間サウナに漬かってられる。
ちょっと余裕が出てきたので、防水カメラでバイカル湖の水中写真なんかをとったりもした。これが、決死のダイブで撮影した貴重な氷の下の画像である。
なんか、とても綺麗そうなのはなんとなく、お分かりいただけただろうか?
バイカル湖は世界一の透明度を誇るといわれているが、実際にその透明度を視覚的に実感できる写真とかはあまりなく、ましてや真冬に水中写真を撮った奴はほとんどおらんだろう。
私自身水中眼鏡をしていたわけではないので、写真で見てなるほどやっぱり綺麗なんだなと納得。
水中で目を開けていたのだけど、後で目がひりひりすることもなく、水質は確かなようである。
今度来ることがあれば、シュノーケルと水中眼鏡の持参も忘れないようにしたい。
そんなことを何回か繰り返すうちに、他の中国人ツアー観光客が冷やかしにやってくる。
なんか「はよ飛び込め」みたいな雰囲気で、外で待っている。
こんな素人のバラエティ企画みたいなモン見て何が面白いのやらと思いつつ、それでもギャラリーがいるとこっちの気分も乗ってくる。
友人Bなんかは、その有り余った運動神経を活かしてとんぼ返りを打ちながら飛び込んだりもした。
サウナの中で、ガイドやロシア人夫妻と話す中で、「「外で見てる連中はただのツーリスト、でもこれで君らもロシア人だ!」」と言われ、ふいにめっちゃ嬉しくなる。
ああ、これがグローカルな体験か、本当にすばらしい限りだ。
日中の感動的な風景と、コミュニティに受け入れられるという、感動的な体験が折り重なって、とても暖かい気分になってサウナを出た。
これまでも、ロシア人夫婦やガイドとはぼちぼち仲良くしてきたが、この体験の後にこのメンバーの中は一層深まったと思う。
翌朝、食事を取りながら、ちょっとばかり文化交流ができればと思って持ち寄った、折り紙で鶴を折って渡す。あと、日本から持ってきた筆ペンで「鶴」と漢字で買いて渡す。筆ペンそのものもロシア人旦那にお土産として渡した。
正直、もうありきたりだろとも思ったが、日本から遠く離れた黒海のほとりに住む二人にとっては十分珍しかったらしく、たいそう喜んでくれた。
帰りの車の中で、軽く涙腺を緩めつつ、島での体験を反芻するのであった。
惜しみつつ、3人のロシア人と3人の日本人は別れを告げる。
ほんの3日ほどの短いたびだったが、本当に感動的な体験だった。
心からそう思えた。
もうコニャックは飲んでいないけど、なんだか体の奥に暖かいなにかを感じた。
ここからは飛行機の出る時間まで、イルクーツクの市内探検である。
さてさて、何が待っているのだろうか??