【考え事】なんで労働組合がリベラル系の政党を応援するのか【まとめ】

ふいに思い立ったので、まとめていきたいと思います。

 

よく、労働組合に対する批判として、労働者のための互助組織をうたいながら、立憲民主党などの特定政党を応援していることについて、労働組合は政治のための組織なのかという批判の声があることがあります。

 

とても素朴な疑問なのですが、これに応えるためには日本の戦前戦後の歴史までさかのぼる必要があります。キーワードは下記の通り

マッカーサーの五大改革指令

共産主義の台頭

・逆コース

55年体制

 

1945年8月

日本はポツダム宣言を受け、連合国軍に無条件降伏します。

GHQの総司令、マッカーサーは当初、日本が今後二度と世界に対して牙をむくことができないよう、戦争を起こした旧政権の幹部を公職から追放し、同時に日本の民主化を進めました。

こうして推進されたのが、日本の政権構造を破壊する、五大改革指令でした。

 

そして、その中の一つに「労働組合の結成推進」がありました。

 

当時、世界において労働組合は、武力を持たない労働者の集まりであるからして、戦争には反対的な立場をとりその抑止力として働くことが多かったのですが、戦前の日本では共産主義が禁止され、労働者の活動が抑止されていただけではなく、戦時中の全体主義のなか労働者からなる政党すらも国家総動員の掛け声にあおられ、挙国一致して戦争への道を推し進めてしまったという反省から来るものです。

 

これを受けて、日本では雨後のタケノコのように労働組合が立ち上がります。

この動きは、政権を打破せんとまでに成長し、1947年2.1全国の労働者が一斉にストライキを取るという、ゼネストが計画するまでに至りました。

 

これを受けて、これまで労働運動を推進していたマッカーサーは、方針を急転。圧力をかけてゼネストを中止させます。

 

この背景には、第二次世界大戦後の世界で、旧ソ連や中国、北朝鮮などの共産主義勢力が急成長しているなかで、こうした動きが革命につながり、日本も共産主義の手に落ちるのではないかという懸念があったといわれています。

同時にマッカーサーは追放していた戦前の政権幹部を呼び戻し、急速に反共産主義の砦としての日本を構築するために、政権の立て直しを行います(これらの急激な方針転換を「逆コース」と呼ぶ)。

こうして、政権に舞い戻ったのがA級戦犯唯一の生き残り、岸信介です。

(ちなみに、阿部元首相は岸信介の孫にあたります。阿部さんは特に岸信介を良く信頼していたとも言われ、これが安倍首相がリベラル勢力から諸悪の根源のごとくに組まれる原因の一つとなったのかもしれません。)

 

もちろんこうした動きは、また戦争の時代に逆戻りしてしまうのではないかという労働者の不安を触発します。戦前の政治勢力に対抗するために、複数あった労働者政党を「日本社会党」に一本化。すると、これに負けじと戦前勢力も勢力を一本化、こうして立ち上がったのが「自由民主党」です。

 

こうして、国内の政党は大きく全体の約2/3を自民党が、約1/3を日本社会党が担う「55年体制」となります。この、約2/3というのがミソで、厳密には自民党が2/3を超えることはなかったそうです。

もし、2/3を超えていたら、当然自民党改憲の発議を行い、GHQから押し付けられた不本意憲法の改正を行うところでしたが、それはギリギリのところで日本社会党に阻まれます。

 

だから、今でも自民党憲法改正を目指し、日本社会党の流れをくむ立憲民主党などは護憲の立場をとっているのです。

 

しばしば、憲法を改正しようとしている自民党が「保守」で、憲法を守ろうとしているリベラル勢力が「革新」とされることに疑問を抱く声がありますが、これはどこを基準として保守的か、革新的かという話であって、基準は第二次世界大戦の前と後、戦前の価値観に対する保守(≒当然、憲法を元に戻そうとする)と、戦前の価値観からの革新(つまり、戦後にできた憲法を守ろうとする)の戦いとなっているのです。

それから、70年、保守と革新は政争を続けます。

平安時代、源氏と平氏がその権力をめぐって争ったように、昭和から平成は保守と革新が争う時代なのです。

 

長年に亘ったたたかいは、いつしかマンネリ化し、その議論は国民の気持ちを置き去りにしていきます。


ということで、冒頭のなんで労働組合が、リベラル政党を支持するのか、というと戦前からずーっと「恒久の平和」が労働者の夢だったからなわけです。

 

こうした歴史を踏まえると、冒頭の問いに対しては「社会とはそーいうもん」の一言で片付くわけですが、一方で現状のリベラル勢力はその原点が労働運動にあることを忘れているのでしょうか?

支持基盤である労働者を守ることよりも、宿敵である自民党を倒すことだけに囚われてしまっているようにも見えます。

皮肉にも、本来リベラル政党の役割である「働き方改革」や「女性の活躍」すらも自民党が主導してしまうという逆転現象すら起きてしまっています。

2009年、日本社会党の子孫にあたる民主党は、一時は自民党から政権を奪い取ることに成功しますが、その後国民の期待に応えることができず、すぐに政権を明け渡すことになってしまいます。

もしこの時、働き方改革や女性の活躍推進を彼らがリーダーシップを持って進めることができれば、もう少し結果は変わったかもしれません。


その後のリベラル政党の凋落については説明不要ですが、私たち労働者は彼らを見限るべきなのか、立て直すよう頑張るべきなのか、それは私にもわかりません。

ただ、私たちが政治の世界に労働者の声を届けたいのであれば、頼れる政治勢力は、自民党よりは立憲民主党などのリベラル政党でしょう。

 

最近はコロナで自民党もさすがに苦戦していますが、もし自民党が2/3以上の議席を獲得し1955年以来の均衡が破られたら、次はどんな時代になるのでしょう?

それは、未来のお楽しみ(?)